労災保険給付ではすべての損害をまかなえない?

労働災害により後遺障害が残ってしまった場合、会社に対して慰謝料や逸失利益を請求することが通常です。

もっとも、労災補償給付には、慰謝料等の項目はありません。

労災補償給付では慰謝料等まではまかなえないのです。

では、どうすればよいのでしょうか?

慰謝料等については、労働災害を起こした会社に対して、直接請求する必要があります。

労働者を雇用している会社には、法律上労働者に対する安全配慮義務が課せられています。

労働災害を起こした会社に安全配慮義務違反がある場合には、会社に対して直接損害賠償を請求することができるのです。

その場合には、労災補償給付のような補償対象の制約はなく、慰謝料等についても請求することが可能です。

ですので、労災補償給付を受けたからといって、必ずしも補償が十分ではない場合があります。

慰謝料の額はどのように決まるのか?

労働災害によってけがをした場合の慰謝料は、傷害慰謝料(通院慰謝料ということもあります)と後遺障害慰謝料とにわかれます。

慰謝料とは、精神的損害を金銭的に評価したものをいいますが、精神的損害は、金銭的評価が容易ではありません。

なので、けがをしたことの慰謝料については、裁判例上、認められている算出方法を用いることになります。

傷害慰謝料は、通常、入院日数や通院日数に応じて算出されます。

後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級(1級から14級まであります)に応じて、慰謝料の金額が定められています。

死亡した場合の慰謝料は、亡くなった方ご自身の慰謝料と近親者の慰謝料とにわけられます。

死亡した方の慰謝料は、その方の属性によっても異なりますが、裁判例上は、2000万円から2200万円程度が目安とされています。

近親者の慰謝料は、配偶者、親、子ども、兄弟に認められます。近親者を亡くしたことの慰謝料です。

裁判例上は、その方の属性にもよりますが、50万円から400万円の範囲で認められることが多いようです。