労災(労働災害)とは、労働者がその労務に従事している最中に発生した、怪我、病気(及びこれらによって死亡した場合のその死亡)のことをいいます。

労災には、大きく分けて、「業務災害」と「通勤災害」の二つの類型があります。

業務災害

「業務災害」とは、労働者の業務上の負傷、疾病、傷害又は死亡のことをいいます。

「業務災害」が認められるためには、当該災害について①業務遂行性、②業務起因性、の2つの要件が必要になります。

①業務遂行性とは、当該災害が使用者の支配下において業務に従事している最中に発生したこと、②業務起因性とは、当該業務と当該災害との間に因果関係が認められること、を意味します。

工場での作業中に、機械に巻き込まれて負傷したような場合には、基本的には①②を満たすことは明らかですが、例えば、上司によるパワハラが原因でうつ病を発症したというような場合には、②の因果関係が認められるかどうか、争いになるケースもあります。

通勤災害

「通勤災害」とは、通勤の際に被った疾病等のことをいいます。

この「通勤」とは、就業に際し、①住居と就業場所との間の往復、②単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動、③就業場所から他の就業場所への移動、のいずれかを合理的な経路及び方法で行うことをいいます。

ただし、これらの移動について、業務の性質を有するものは除外されます(業務の性質を有する場合には、「通勤災害」ではなく「業務災害」の範疇に含まれます。)。

勤務先に対しては、通勤手段や通勤経路をあらかじめ届出しているケースが多いと思いますが、これらにしたがっての通勤中に災害が発生した場合には、基本的には通勤災害に該当します。

他方、遠回り、寄り道をしての最中に災害が発生した場合には、合理的な理由が必要です。

労災認定された場合

労災認定がされた場合、労災保険によって給付が予定されているのは、

①療養給付(治療費等)
②休業給付
③傷害給付(症状固定時の症状により等級認定された場合)
④遺族給付(本人死亡の場合)
⑤葬祭料・葬祭給付(本人死亡の場合)
⑥傷病等給付(等級3級以上に該当する負傷疾病が、1年6か月以上治らない場合)
⑦介護給付

の7項目です。

これらの給付については、実損害額ではなく、治療の日数や賃金額に応じて定額が支給されるため、現実に発生した損害の全額が填補されるとは限りません。

また、上記①から⑦を見れば明らかなように、労災給付では慰謝料の支払は予定されていません。

これらの賠償を求めるためには、会社の不法行為責任や債務不履行責任(安全配慮義務違反)を追及していくことが必要です。