労災の休業補償はいつからいつまでもらえる?休業補償の基本と給付までに時間がかかっている場合に考えられる要因を解説

労災(労働災害)には、業務中に発生した事故が原因で、負傷したり、病気になったり、死亡したりする「業務災害」と、通勤中に発生した事故が原因で、傷害を負ったり、亡くなったりする「通勤災害」があります。

どちらの場合でも労災保険から給付金の支給を受けることができます。

労災被害にあった場合に支払われる労災保険の給付金には、療養補償給付、介護補償給付、障害補償給付、遺族(補償)年金・一時金など、いくつか種類がありますが、労災による傷病によって仕事を休むことになった場合に、その間の収入を補償する給付金が休業補償給付です。

本記事では、労災の休業補償の基本と重要なポイント、休業補償をもらえるタイミング、給付までに時間がかかる原因について解説します。

労災の休業補償が給付される期間

休業補償はいつから支給されるか

労災の休業補償給付は、労働者災害補償保険法第14条1項に定められている、以下の3つの支給要件を全て満たしている場合に、休業4日目から支給されます。

  1. 業務上の事由による負傷、疾病で治療中であること
  2. そのために労働ができず休業していること
  3. 勤務先から賃金が支払われていないこと

休業の1日目から3日目までは、休業補償は支給されず、この期間を待期期間と言います。

休業補償はいくらもらえる?具体的な計算方法

休業補償給付の支給を受ける労働者には、休業補償給付と併せて「休業特別支給金」も支給されることになるため、被災労働者は合計で給付基礎日額の8割相当を受け取ることができます(この給付基礎日額とは、労働基準法の平均賃金にあたるもので、労災発生前の賃金を基準に算出されます)。

休業補償給付と休業特別支給金の詳細を以下で説明します。

休業補償給付

休業補償給付は給付基礎日額を基準に、休業1日につき給付基礎日額の6割にあたる金額が支給されます。

【計算式】給付基礎日額 ×(休業日数 – 3日)× 60%

休業特別支給金

休業特別支給金は給付基礎日額の2割にあたる金額が支給されます。

計算式】給付基礎日額 ×(休業日数 – 3日)× 20%

※休業補償は給付基礎日額の60%、特別支給金は給付基礎日額の20%が補償されるので、上記の金額はあくまで目安の金額とお考えください。

※休業補償給付金と休業特別支給金で賄われない部分については、勤務先に対して請求できるケースもあります。

休業補償はいつまで支給されるか

休業補償は、労働災害による怪我や病気のために療養が必要な場合に支給されるものですので、怪我や病気が治ゆし、再び仕事ができるようになるまで支給されます

ただし、労災保険でいう「治ゆ」とは、完治だけではなく「症状固定(=症状が一進一退となり、これ以上治療を続けても改善が見込まれない状態になること)」を含む広い概念です。

すなわち、怪我や病気が完治した場合だけでなく、これ以上治療を続けても症状の改善が見込まれない「症状固定」の状態になった場合には「治ゆ」と判断され、休業補償給付は打切りになります。

なお、症状固定で「治ゆ」と判断された場合、残存する症状が後遺障害として認定されたときには、障害等級に応じて障害補償給付や障害補償一時金が支給されることになります

また、病気やケガが傷病等級第1級~第3級に該当する場合には、休業補償の支給が開始されて1年6か月を経過すると、休業補償から傷病補償年金に制度が移行しますので、その時点で休業補償給付は打切りとなります。

労災の休業補償はいつもらえる?初回の振り込みのタイミング

休業補償給付の初回振込のタイミングは、請求手続きを行ってから1か月程度を要するのが一般的です。

ただし、複雑な労災事故である場合など、労働基準監督署の審査次第では1か月以上かかるケースもあり、一概には言えません。

休業補償給付の振込が行われる前には、決定額を記した支給決定通知が自宅に届きます。

一方で不支給が決定された場合には、不支給決定通知が自宅に届くことになりますので、なかなか口座に振り込まれず不安な方は、まずは支給決定通知がご自宅に届いているか確認をしてください。

休業補償給付の支払いまでには、上記に記載したとおり一定の期間を要しますので、休業の間の生活に不安がある方は早めに請求手続きをするようにしましょう。

労災の休業補償、2回目以降はいつ振り込まれるのか?

労災の休業補償給付は請求ごとの振込となるため、2回目以降も請求をする必要があります

日付、曜日など決まったタイミングで振り込まれるというものではありませんので、労働者が請求するごとに振り込まれることになります。

労働基準法施行規則39条では、事業主の義務として「休業補償は、毎月一回以上、これを行わなければならない。」とされているため、労災による休業期間が1か月以上の長期にわたる場合は、毎月請求を行うのが適切です。

初回の請求をして支給決定が出ていれば、2回目以降は書類に不備が無い限りスムーズに支給されるでしょう。

支払いがない場合に考えられる原因

労災保険の請求書に不備があるケース

請求書の内容に不備があった場合、内容の訂正のために請求書は差し戻しとなりますので、通常よりも時間を要することになります。

記載漏れがないか、内容に誤りが無いか、必要な添付書類は揃っているかなど、確認してから労働基準監督署に請求書を提出するようにしましょう。

労災認定の判定が難しいケース

うつ病などの精神障害や脳・心臓疾患などのケースでは、業務起因性の審査に通常よりも時間を要することがあります。

労災認定の判定を受けるまでに時間がかかった結果、支払いが遅れることがあります。

会社側が手続きを進めていないケース

労災は法律上、被災従業員である労働者自身が労働基準監督署長に請求書を提出することが原則ですが、実際は、労働者の負担を軽減するため勤務先が労災の休業補償申請の手続きを進めてくれるケースが多くあります。

しかし、労働者が必要な申請書類をきちんと揃えて会社に対して手続きを依頼した場合であっても、勤務先が対応を怠っている場合は、いつまでたっても給付金は振り込まれません。

勤務先の方で事務処理に時間がかかっていた、失念していたといった場合であれば、催促することで早急に進めてもらうことができるかもしれませんが、そもそも事業主が労災保険を使わせたくないために手続き怠っているようなケースも、残念ながら存在します。

労災の申請は、雇用期間中・退職後など関係なく労働者自身で行うことができますので、勤務先に手続きを進めてもらえない場合は、労働者自身で申請手続きを進めるか、一度弁護士に相談することをおすすめします。

労災の休業補償給付の申請の流れと必要な書類

労働者自身で休業補償給付の申請手続きを進める際は、以下の必要書類を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。

なお、請求には申請期限(時効)があり、休業補償給付は、賃金の給付を受けない日の翌日から2年以内に請求しなくてはならないため、注意が必要です。

請求書

  • 業務災害の場合…休業補償給付支給請求書(様式第8号)
  • 通勤災害の場合…休業給付支給請求書(様式第16号6)

※請求書は厚生労働省のHPまたは労働基準監督署で取得可能です。

請求書の証明欄は、治療を受けた医師と勤務先に記入してもらう必要があります。

勤務先が労災保険を使用することに協力的ではないなど、事業主の証明を受けられない場合には、空白のままで差し支えありません。

請求書提出時に、労働基準監督署にその旨を伝えましょう。

添付書類

  • 賃金台帳、出勤簿の写し、同一の事由で障害年金を受給している場合はその支給額の証明書

まとめ

以上、休業補償の支給内容、支給期間、支給手続について解説してまいりました。

休業補償を請求しているにもかかわらず、十分な支払いが受けられない場合には、まずは勤務先を通じて請求している方は勤務先に、ご自身で請求されている方は労働基準監督署に確認の連絡を入れてみるのがよいでしょう。

それでも解決しない場合には、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所では労災申請・労災保険給付に関するお困りごとや、勤務先への損害賠償請求に関するご相談を、初回無料で受付しておりますので、お気軽にご相談ください。


労災(労働災害)に関する基礎知識や重要なポイント、注意点についてコラムで解説していますので、ぜひご覧ください。

この記事を監修した弁護士
弁護士 渡辺 伸樹

渡辺 伸樹
(わたなべ のぶき)
弁護士法人一新総合法律事務所 理事・長野事務所長・弁護士

出身地:新潟県上越市
出身大学:中央大学法科大学院修了
主な取り扱い分野は交通事故、労災など。
事故賠償チームに所属し、保険代理店向けのセミナー講師を多数務めた実績があります。

※本記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。