新潟事務所所属
「労働」というものは、本来的に「人間の生きていくための営み」です。
ですから、とても大切な活動で、「人間」と切り離すことができません。
それでも、これを契約という場面で、スケールを設定しますと、使用者と労働者という一種の対立構造のような法律関係になり、業務上の命令をする側と、その命令を受ける側という原則的な立場設定をすることになります。
しかし、その「労働」のなかで、事故が起きたりしますと、怪我をした場合には、人間生活全体に影響を及ぼすことになりますので、労働災害は深刻なこともままあります。
私が経験した労働災害の事案
山の中での木材の搬出作業で、誤って鉄のワイヤーに自分の足が巻き込まれ、片足切断という事案がありました。本人のショックはもちろん、そばで生活している奥さんも、悲しんでいました。
事件は、裁判になり、使用者側を訴え、損害賠償請求をしましたが、時間が、年老いた夫婦の心情を落ち着かせ、裁判での結果も、裁判所の進めた和解案で決着を見ることとなりました。
このとき、証人尋問をした使用者側の代表者、社長さんですね、この方は、この労災事故に対し、反省をし、悔いていることを供述しましたが、一方で、事故にあったご本人の側の過失も、代理人弁護士を通じて主張していました。
この過失を一部認めた和解でしたが、それでもお互いの言い分や証拠は出し尽くされたと、裁判所も思ったのでしょう。また、社長の反省の言葉も、ご本人の心に届いたようです。
その後、この会社の社長は、私に事業の問題なども相談に来るようになり、以後も付き合いが続くことになりました。労働者の方は、仕事を辞められましたが、奥さんと一緒にその後の生活を送られました。
労働災害事件への思い
不幸な事故は、ないことに越したことはありません。しかし、起きます。そのときに、法律の枠組みだけでなく、その人自身の生活や人生への眼差しも必要になります。弁護士も、そのことを理解しながら、援助をしていくことが重要かと思います。
当事務所はそういう取り組みを続けたいと思っています。